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人々の心に響く鐘の音。仏教のお寺で鐘をつく意味とは?

2019年10月04日

 

 

仏教寺院にはさまざまな魅力がありますが、

夕暮れ時の境内に鐘の音が鳴り響く様子は、

とりわけ美しい光景のひとつではないでしょうか?

初めて訪れたお寺でも、

鐘の音を聞くと不思議と懐かしさを感じることが珍しくありません。

今回は、そんなお寺の鐘の音についてお伝えしていきます。

仏像のために全国各地の寺院へ足を運ぶ仏女のみなさんは、

お寺で過ごすかけがえのない時間をさらに楽しむために、

ご紹介する情報をぜひ参考にしてみてください!

 

秋の俳句「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」

のトリビア

 

仏教寺院が登場する秋の俳句といえば、

正岡子規の作品が大変有名です。

「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」

国語の教科書にも掲載されているこちらの俳句は、

子どもの頃に鑑賞した経験がある方も多いのではないでしょうか。

寺院の鐘の音は日本人にとって馴染み深いもの。

大晦日に鳴る「除夜の鐘」や、

朝と夕方に鳴る時報の鐘をはじめとして、

時代を超えて私たちの身近にある存在といえそうです。

さて、そんな鐘の音が詠まれた正岡子規の俳句には、

意外な事実があります。

作中で鳴ったのは“法隆寺”の鐘となっていますが、

実際に正岡子規が聞いたのは、

なんと“東大寺“の鐘だったようです。

東大寺の鐘の音を聞いた翌日、

作者が法隆寺へ足を運んだところ、

後者のほうがふさわしいと考えられ、このように直されました。

東大寺と法隆寺は、

いずれも国宝や重要文化財に指定された多くの仏像が安置されている寺院であり、

仏女のみなさんにとっては見逃せない存在でしょう。

仏像鑑賞のために訪れる機会があれば、

ぜひ鐘の音にも注目してみてください。

※出典:現代俳句協会「現代俳句データベース」

http://haiku-data.jp/work_detail.php?cd=23

 

お寺で鐘が鳴るのはいつ?

 

お寺を参拝したとき、辺りに荘厳な鐘の音が響くのは、

なんとも味わい深い光景だといえます。

ところで、お寺の鐘はどんなタイミングで鳴っているのでしょうか?

まず、寺院の鐘は時刻を知らせるための時報として鳴らしていることがよくあります。

一般的に時報として鳴らす鐘は、

朝と夕方につきます。

鐘をつく時刻はお寺により異なり、

鐘をつく回数にも特に決まりはありません。

ただし、宗派や地域によりルールが決められている場合もあります。

現代ではほとんどの家庭に時計があり、

人々は腕時計やスマートフォンでいつでも正確な時刻を知ることができます。

多くの人にとって、

時報としての鐘の音はそれほど重要に感じられないかもしれません。

しかし、こうして時計が普及する以前、

時報としてのお寺の鐘にどれだけ大切な役割があったかは、

想像に難くないでしょう。

時計が普及した今でもなお、

時報として鐘を鳴らし続けているお寺もあります。

古くから続く習慣にしたがい、

毎日決められた時刻に鐘をついているのです。

そんな歴史を感じる響きに、

私たちはつい聞き入ってしまうのかもしれません。

 

除夜の鐘をつく意味とは

 

毎日鳴らす時報の鐘のほかに、

大晦日につく「除夜の鐘」があります。

除夜の鐘は、毎年12月31日の深夜0時に鳴らすのが特徴です。

鳴らす回数には108回という決まりがあり、

中には参拝客が鐘をつく寺院もあります。

そもそも「除夜」とは、

大晦日の別名である「除日(じょじつ)」の夜を指す言葉です。

その年の最後の日から、

新しい年へと移る大切な時間。

深夜に響く除夜の鐘の音を聞くと、

自ずと1年間を振り返る意識が芽生えるのではないでしょうか。

除夜の鐘をつく回数の「108」という数字は、

仏教で人間の煩悩の数をあらわすといわれています。

大晦日に108回の鐘をつくことには、

煩悩をはらうという意味合いがあるのです。

私たち悩める衆生にとって、

欠かせない行事といえるでしょう。

 

お寺の鐘にはどんな種類がある?

 

お寺にある鐘には、大きさによりいくつかの種類があります。

まず、時報や大晦日に鳴らす大きな釣り鐘は、

「梵鐘(ぼんしょう)」と呼ばれる種類です。

この梵鐘をつく木製の棒は「撞木(しゅもく)」といいます。

それに対して、

梵鐘よりもサイズの小さい釣り鐘は「半鐘(はんしょう)」と呼ばれます。

また、お堂の中にはさらに小さな鐘もあります。

僧侶が読経で用いる小さな鐘は「磬子(けいす)」と呼ばれるものです。

これを鳴らす棒は「倍(ばい)」と呼ばれます。

このように、仏教寺院ではさまざまな鳴り物が使われています。

梵鐘は遠くまで響きわたるような、

独特の余韻のある鳴り方をするのが特徴です。

荘厳な鐘の音は、

時代を超えて人々から愛されています。

正岡子規の俳句に詠まれたように、

心に訴えかけるものがある鐘の音。

仏教寺院を参拝したときや、大晦日の晩に、

改めてその響きをじっくりと鑑賞してみてはいかがでしょうか。

 

***

 

仏女のみなさんなら、

お寺の鐘の音にジーンときたことが一度はあるはず。

昔から変わらない日本の風景のひとつに、

仏教寺院の鐘の音があります。

仏像を見るためにお寺へお出かけしたときは、

境内にある梵鐘を見つけて見学してみましょう!

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